BEWA講師ブログ

冠詞のお話

  先日: Please note that the products (goods) to be sent may slightly differ in color from the sample.(お送りする商品はサンプルとは多少色が異なることがあることにご留意ください)についてお話させて頂きました。今回は、冠詞と名詞の単数・複数について軽く触れようと思っています。ここで、この文章:
  Please note that the products to be sent may slightly differ in color from the sample.
のthe products、in color, the sampleの三つの句の変化の可能性を考えますと:  

  ①the productsは:
a product, products, the product, the products, product の五通り、
  ②in colorのcolorは:
a color, colors, the color, the colors、color の五通り、
  ③the sampleのsampleは:
a sample, samples, the sample, the samples、sample の五通り
が考えられます。ですから、これら三つの句の:
  Please note that the products to be sent may slightly differ in color from the sample.
の文中における三つの句中の冠詞・名詞の単複の組み合わだけで5X5X5=125通りあることになります。
  米国に出張した折、取引先のマネージャーに 「 このように複雑な選択を瞬時にすることは困難ではないですか 」 とお聴きしたことがあります。「初めはとても困難でした」とのことでしたが、「 小学校で作文を教えられたりしているうちに、迷わずに使えるようになった 」 とのことでした。思えば、我々の日本語も似たようなものでしょう。
  通常、米人が英文法に頓着しないように、我々も日本語文法に頓着致しません。また、普通、米人が英文法について説明できないように、日本人も日本語文法について語ることは困難でしょう。このように、文法が現実の問題となるのは、外国人が外国語を正しく身に着けようとする場合(日本人が英語を正しく理解しようとする場合)となります。
ここで、上の①、②、③について、文法的説明を試みますと:
  ①the productsが定冠詞複数となる理由は:
英語では、定冠詞the + 複数名詞は、「一つも残さず全ての~」の意味となります。ですので、この場合は「お送りする商品」とは即ち「一つも残さず全てのお送りする商品」のことですから、ここではthe products を選択することとなります。
  ②in colorのcolorは:
colorは普通名詞ですが、この場合、抽象名詞的に使用されているものと考えることが出来ます。即ち「色と云う事柄について」とでもなりましょうか。抽象名詞には、基本的に冠詞が付きませんのでin colorとなります。同様にin performanceやin quality等の表現も可能です。
  ③the sampleについては:
the + 単数名詞は「one and only, 唯一無二の~」の意味となります。the sampleとは、この場合、既に取引先に送付済みの唯一無二の商品見本のことですので、the sampleとなります。
  このように、この文中の三つの句に係る冠詞と名詞単複の選択のみで125通り、先日お話したto be sentとsentの二通りの選択を考えますと250通り、更にmayとmightの選択を加えますと500通り、note と be noted の選択を考慮すれば1,000 通りに至り、in color, from the sampleの二つの副詞句、更にはslightlyの文中に於いて取り得る位置等を考えますと、数千通りの可能性が存在することとなります。
  Please note that the products to be sent may slightly differ in color from the sample.
数千の網の目を掻い潜って、たった16 個の単語からなるこの英文に辿り着くという事実を、重く受け止める必要があるものと考えます。その地に生まれ、そして学び育ち、社会生活を送りながらこのような選択も可能となるのでしょう。
  日本で生まれ育った我々も、お客様との対応、職場等で用いる日本語に日々苦慮しております。当に今、私も知力を駆使し此の文章を書き上げようとしております。外国語(英語)をビジネスの現場で正しく用いようとするならば、地に足のついた学習が求められます。正しく固いビジネス日本語(ビジネス英語)を柔らかく話せば、知性の偲ばれる企業人の言語となるでしょう。その反対は御座いません。
  読み書き不能の母語話者(ネイティブスピーカー)を除けば、読んで理解の出来ない文章(英文)を聴いて理解することは到底出来ません。Reading不能の文章は同時にListening不能なのです。また、書くことの出来ない文章(英文)を話すことも不可能でしょう。Writing不能な文章は同時にSpeaking不能なのです。
  いかに時間を掛けようとも書けない文章(英文)を若し話しているとすれば、凡そ企業人らしからぬ言語を用いていることとなるでしょう。読むこと、書くことが相互に関連し合いながら学問の根幹に在ることは、言語にあっても同様でしょう。只、言語の場合は、読み書きする内容とその学び方が、特に重要となるようです。詳しくは、著書「ビジネス英語の真髄」(ビジネス英語ライティングアカデミー、スタート講座副本)をご覧頂きたく。

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2011/02/18 ビジネス英語   林 行雄

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