BEWA講師ブログ

教室にて

  教室の左側の棚の隅に置かれたLUXの真空管アンプ(6CA7プッシュプル)を点けています。書棚に置かれたボーズのスピーカーから、リヒテルが演奏するバッハ平均律ピアノ曲集が流れています。1972~1973年に録音されたもので、当時クラッシック年間最優秀レコードに選ばれたように記憶しています。その頃はCDなど市場に存在せず、私もLPレコードを購入致しましたが、そのレコードも今は物置の何処かに隠れています。  今、聴いているリヒテルはLPをCDに焼きなおしたもので、だいぶ前に秋葉原の石丸電気で購入致しました。店員さんが「最後の一セットです」と言っていたのを覚えています。一時期、リヒテルの平均律ピアノ曲集ばかり聴いていました。数年も続いたように思います。カセットに録音し、ピロースピーカーを枕の下に入れて聴いていたこともあります。  

  バッハといえば、マタイ受難曲あるいは無伴奏チェロが有名なようですが、共に、素人にとっては、とっつき易い曲とは思えません。マタイ受難曲をステレオ装置で聴きますと、一口で言えば、聴くほどに辛気臭く感じられ、曲の最後まで聴くには精神と体力を相当消耗する、マタイ受難曲とはそういう曲と、長く思っておりました。  しかしケルンに出張した折、コンサートホールでマタイ受難曲を聴き、その印象が変わりました。幸運にもS席、演奏者から10メートルほどのところで聴くことが出来たのですが、演奏が進むにつれて、星の光が無限に地上に降り注ぐような、透明で幻想的な世界が浮かび上がり、まるで、宇宙との交信が試みられているように感じられました。  今、気がつけば、リヒテルの演奏するCDはすでに終わっていて、棚の上のシクラメンは沢山の白梅が活けられた花瓶の横で元気に咲いています。

2011/02/17 教室にて   林 行雄

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