『私は胃潰瘍ではなくて、胃がんなのです』の英訳文として、
1) I am not gastric ulcer but stomach cancer.
なる解答が現れましたが、これは間違いです。
何故間違いかといえば、
2) I am not gastric ulcer but stomach cancer.
S V C
と、この文章は一応SVC文型とはなるものの、英文としては、I = gastric ulcer でもstomach cancer でもないので、この文章は誤りであることなります。この誤りは、名詞を用いて状態を表す補語を表したところに原因があります。英語では、補語が「もの」を表す場合は名詞(句、節を含む)を用い、補語が状態を表す場合は形容詞(句、節を含む)を用い表さねばなりません。ごく簡単にご説明すれば、
3) I am ill.
I am ill.
S V C(形容詞)
なのであって、
4) I am illness.
I am illness.
S V C(名詞)
ではありません。同様に、
5) I am sick.
なのであって、
6) I am sickness.
ではありません。
さらに、
7) He is rich.
なのであって、
8) He is richness.
ではありません。
プロ野球の某監督が米国キャンプ地のレストランで、『「私はチキンを注文します 」のつもり?で、
9) I am chicken.
「私は(私自身が)鶏肉(chicken: 名詞)です」と、言った 』 との実しやかな話が伝えられていますが(本当のところは解りません)、
この誤りは、
4) I am illness.
や
6) I am sickness
或いは
10) I am stomach cancer.
等の誤りと同じ性質のものであることがわかります。
ここで、
10) I am stomach cancer.
は、
11) I have stomach cancer.
I have stomach cancer
S V O
と、すれば正しい英文となります。
また、
12) I am a stomach cancer patient.
I am a stomach cancer patient.
S V C
とすれば、I (私)= a stomach cancer patient(私 = 胃がん患者)となりますので、正しい英文となります。
以上、『私は胃潰瘍ではなくて、胃がんなのです』の訳例として、
13) I have stomach cancer, not ulcer.
を、挙げることができます。
ところで、
9) I am chicken.
の、chicken には形容詞(臆病な(= chicken-hearted))の意味もありますので I am chicken. は 『私は臆病です』 の意味となります。
私が目にした記事も、其処の処を手ひどく揶揄するものでしたが、笑い話にされるくらいですから、レストランでは正しくチキンを注文できたのでしょう。ところで 『私はチキンを注文します』 と正しく日本のレストランで注文できる米人(監督)がどれほど存在する(した)のでしょうか? 又、日本語では『私は癌です』は普通に用いられ、『私はチキンです』もレストランでの会話であれば可能な範囲でしょう(本来であれば、『私はチキンにします』辺りでしょうか)。
この種の誤謬は『母語干渉』によるものでしょう。英語を考えるとき、日本語による母語干渉には常に注意する必要があります。元々、日本語には主語は存在せず、「私は」の「は」は係助詞、そして「私は」の意味は「私に関しては」です。更に「私に関しては」は副詞句です。ですから、日本語の『私は』は、本来的には英語の主語(名詞)にはなり得ません。このように、母語干渉は言語構造のごく深いところに起因しているようです。
フロイト的に言えば、イド(無意識)の領域に位置する文法的認識を欠く日本語(文法)が、エゴ(意識)の領域に浮遊する祖雑・曖昧な英語(英文法)に干渉し、時として苛烈な誤謬を生じるということでしょう。補語が「もの」を表す場合は名詞(句、節を含む)、補語が状態を表す場合は形容詞(句、節を含む)であること、これはとても大切なことです。
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